共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有するときに、各共有者が持つ所有権の割合のことです。自分の持分だけなら単独で売却・放棄できますが、不動産全体の売却や建て替えには共有者全員の同意が、賃貸などの管理には持分価格の過半数の同意が必要です。
「親が亡くなって、実家が兄弟3人の共有名義になった。自分の持分って、結局なにができるの?」。共有持分のご相談は、たいていこの疑問から始まります。
共有持分は、持っているだけでは使い道が分かりにくい権利です。しかも2023年4月の民法改正で、共有者同士で決められることのルールが大きく変わりました。改正前の解説のまま判断すると、本来は選べる手段を見落とすことがあります。
この記事では、共有持分の意味と持分割合の決まり方、共有者が単独でできること・同意が要ることの区分、連絡がつかない共有者がいる場合の新しい制度までを、条文の一次情報とあわせて編集長の桐谷美咲が整理します。
この記事の要点
- 共有持分の意味:不動産全体に及ぶ所有権を、共有者で分け合う「割合」です。土地や建物の特定の部分を指すものではありません。
- 持分割合の確認:登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確認できます。割合がはっきりしないときは、各共有者の持分は等しいと推定されます(民法250条)。
- 同意のルール:修繕などの保存行為は単独、賃貸などの管理行為と軽微な変更は持分価格の過半数、全体の売却や建て替えは全員の同意が必要です。
- 自分の持分の処分:自分の持分の売却・放棄は、他の共有者の同意なしに単独でできます。
- 2023年の民法改正:連絡がつかない共有者がいても、地方裁判所の決定を得て管理・変更を決めたり、その持分を取得したりできる制度が整いました。
目次
共有持分とは?意味と持分割合の決まり方
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する「共有」の状態で、各共有者が持つ所有権の割合です。持分は土地や建物の一部分を指すものではなく、不動産全体に対して割合に応じて及ぶ権利で、民法249条も各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用ができると定めています。
「共有」「共有持分」「共有名義」は似た言葉ですが、指しているものが少しずつ違います。
- 共有:1つの不動産を複数人で所有している状態そのもの
- 共有持分:その共有状態で、各共有者が持つ所有権の割合(例:2分の1、3分の1)
- 共有名義:登記簿上、複数人が所有者として登記されている状態
持分割合はどう決まるのか
持分割合は、不動産を取得したきっかけによって決まり方が変わります。
| 取得のきっかけ | 持分割合の決まり方の目安 |
|---|---|
| 夫婦・親子での共同購入 | 購入代金の負担割合(出資割合)に応じて登記するのが基本です。出資割合と異なる割合で登記すると、差額分が贈与とみなされることがあります。 |
| 相続 | 遺産分割が終わるまでは法定相続分が基準です。遺産分割で決めた割合で登記し直すこともできます。 |
| 贈与・持分の売買 | 贈与や売買の対象になった割合を取得します。 |
| 割合の定めが不明 | 各共有者の持分は相等しいものと推定されます(民法250条)。 |
持分割合は登記簿で確認する
自分の持分割合は、法務局で取得できる登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確認できます。共有の場合、所有者ごとに「持分2分の1」のように割合が記載されています。
相続登記が済んでいない不動産は、亡くなった方の名義のまま残っています。2024年4月からは相続登記が義務化され、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内の申請が必要です(不動産登記法76条の2)。まずは現状の名義と割合を正確に把握するところから始めましょう。
押さえておきたいポイント
持分2分の1の共有者は、不動産の半分を自由に使える人ではなく、不動産全体を2分の1の割合に応じて使える人です。この「全体に及ぶ割合」という性質が、共有の扱いを難しくしています。
共有者が単独でできること・同意が必要なこと
共有者が不動産について行える行為は、民法上「保存行為」「管理行為」「変更行為」の3つに分かれ、必要な同意の範囲がそれぞれ違います。修繕などの保存行為は単独で、賃貸などの管理行為は持分価格の過半数で、建て替えなどの変更行為は共有者全員の同意で決めます。
これに加えて、不動産全体の売却と、自分の持分だけの処分も区別して押さえておきましょう。
| 区分 | 必要な同意 | 具体例 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 保存行為 | 各共有者が単独でできる | 雨漏りなど現状を維持するための修繕 | 民法252条5項 |
| 管理行為(軽微な変更を含む) | 持分価格の過半数 | 一定期間内の賃貸、管理者の選任、外壁・屋上防水などの大規模修繕 | 民法252条1項・4項、252条の2 |
| 変更行為 | 共有者全員の同意 | 建物の建て替え・増改築、土地の造成、長期の賃貸 | 民法251条1項 |
| 不動産全体の売却 | 共有者全員の同意(全員がそれぞれの持分を売る) | 土地・建物の全体を第三者に売る | 民法206条・251条 |
| 自分の持分の処分 | 単独でできる | 自分の持分の売却・放棄 | 民法206条・255条 |
過半数で決められる賃貸の期間
共有不動産を賃貸に出すことは管理行為にあたりますが、持分価格の過半数で決められるのは、次の期間を超えない賃貸借に限られます(民法252条4項)。この期間を超える長期の賃貸借は、原則として共有者全員の同意が必要です。
- 建物の賃貸借:3年
- 土地の賃貸借(山林の栽植・伐採目的を除く):5年
- 山林の栽植・伐採を目的とする賃貸借:10年
更新がある普通借家契約や借地契約の扱いは個別の判断が必要になるため、契約前に弁護士や司法書士に確認しておくと安心です。
2023年4月の民法改正で変わったポイント
2023年4月1日に施行された改正民法では、共有者同士で物事を決めにくかった点が見直されました。主な変更点は次のとおりです(参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」)。
- 軽微な変更は過半数で決められる:形状や効用の著しい変更を伴わないものは、持分価格の過半数で決定できます。法務省は、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水などの大規模修繕工事を例に挙げています。
- 共有物の管理者を選べる:持分価格の過半数で管理者を選任し、軽微な変更を含む管理を任せられます(民法252条の2)。
- 使う共有者の義務を明文化:共有物を使う共有者は、別段の合意がない限り、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負い、善良な管理者の注意をもって使う必要があります(民法249条2項・3項)。
- 連絡がつかない共有者がいても決められる:所在が分からない共有者や賛否を示さない共有者がいる場合に、裁判所の決定を得て残りの共有者で決める仕組みができました。
共有状態を続けると起きやすい5つの問題
共有状態を続けると起きやすい問題は、全体を売れず活用が止まる、相続のたびに共有者が増える、費用負担を巡って不公平が生じる、連絡のつかない共有者が出る、共有物分割請求を起こされる、の5つです。どれも時間がたつほど解決が難しくなります。
不動産全体を売れず、活用が止まる
不動産全体の売却や建て替えには、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば話が進まず、空き家のまま固定資産税と維持費だけを払い続ける状態になりがちです。
相続のたびに共有者が増える
共有者が亡くなると、その持分は相続人に引き継がれます。兄弟3人の共有が、次の世代では甥や姪を含む多人数の共有になることがあります。共有者が増えるほど、全員の同意を集めるのは難しくなります。
費用負担を巡って不公平が生じる
各共有者は、持分に応じて管理の費用やその他の負担を負います(民法253条1項)。固定資産税は共有者が連帯して納付する義務を負うため(地方税法10条の2)、代表者がまとめて払い、ほかの共有者が精算に応じないというトラブルも起こります。
なお、1年以内に負担を果たさない共有者がいる場合、他の共有者は相当の償金を支払ってその持分を取得できます(民法253条2項)。
連絡のつかない共有者が出る
疎遠になった親族や、相続登記がされないまま所有者が分からなくなった持分が混ざると、話し合いそのものができなくなります。こうした場合に備えて、2023年4月の民法改正で裁判所の手続きが新設されました。
共有物分割請求を起こされる
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項。5年を超えない期間内の不分割の契約は可能)。協議が調わなければ裁判所に分割を請求でき(民法258条)、分割の方法によっては競売になることもあります。共有持分が第三者に売られ、その買主から分割を求められるケースもあります。
連絡がつかない共有者がいるときに使える裁判所の手続き
連絡がつかない共有者がいる場合は、2023年4月施行の改正民法により、地方裁判所の決定を得て、残りの共有者だけで管理や変更を決めたり、所在等不明共有者の持分を取得・譲渡したりできます。いずれも不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる手続きです。
手続きごとに、できることと要件が違います。
| 手続き | できること | 主な要件・注意点 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 所在等不明共有者がいる場合の変更・管理の決定 | 所在が分からない共有者を除いた共有者で、変更(同意)や管理(持分の過半数)を決められる | 裁判所による公告と、1か月以上の異議届出期間の経過が必要 | 民法251条2項・252条2項1号、非訟事件手続法85条 |
| 賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理の決定 | 賛否を示さない共有者を除いた持分の過半数で、管理に関する事項を決められる | 事前の催告と、裁判所からの通知後1か月以上の期間内に賛否が示されないことが必要。変更行為には使えない | 民法252条2項2号、非訟事件手続法85条 |
| 所在等不明共有者の持分の取得 | 申し立てた共有者が、所在が分からない共有者の持分を取得できる | 公告と3か月以上の期間の経過、裁判所が定める額の供託が必要。持分が相続財産に属する場合は相続開始から10年の経過が必要 | 民法262条の2、非訟事件手続法87条 |
| 所在等不明共有者の持分の譲渡 | ほかの共有者全員が持分を譲渡することを条件に、所在が分からない共有者の持分も含めて不動産全体を第三者に売れる | 所在等不明共有者は時価相当額を持分に応じて按分した額の支払いを請求できる。相続財産に属する場合は10年要件あり | 民法262条の3 |
所在等不明共有者の持分を取得した場合でも、その共有者は取得した共有者に対して時価相当額の支払いを請求できます(民法262条の2第4項)。権利を一方的に奪う制度ではなく、金銭で調整したうえで共有状態を整理する制度だと理解しておきましょう。
申立てにあたっては、所在を探すために行った調査の経緯を説明できるよう準備しておくと手続きが進めやすくなります。書類の準備や裁判所とのやり取りには専門知識が要るため、弁護士・司法書士への相談を前提に検討しましょう。手続きの全体像は法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目」、条文は非訟事件手続法で確認できます。
桐谷式:共有持分は「関係性」と「時間」で扱い方を決める
共有持分の扱い方は、共有者と話し合えるかという「関係性」と、いつまでに解決したいかという「時間」の2つで大きく変わります。権利の区分を知ったうえで、この2つの軸で状況を整理すると、取るべき手段を絞り込みやすくなります。
著書『桐谷式 状況×軸メソッド』では、複雑な不動産の判断軸を8つに分けて整理しています。共有持分では、そのうち「F 関係性」と「E 時間」の2つが判断を大きく左右します。
1
現状を確認する
登記事項証明書で、共有者全員の氏名と持分割合、相続登記が済んでいるかを確認します。
2
関係性を見極める
共有者全員と話し合えるのか、一部の共有者とは話せないのか、連絡がつかない共有者がいるのかを整理します。
3
時間軸を決める
時間をかけても全員でまとまりたいのか、早く自分だけ共有から抜けたいのかを決めます。
話し合えるなら全員での売却や持分の買い取りを、話し合えないなら自分の持分の売却や裁判所の手続きを検討する
共有持分を手放す・共有を解消する主な方法
共有持分を手放す・共有を解消する主な方法は、共有者全員で不動産全体を売る、他の共有者に持分を売る・贈与する、自分の持分だけを第三者に売る、持分を放棄する、共有物分割請求をする、の5つです。共有者との関係性や急ぎ具合によって、向いている方法が変わります。
- 共有者全員で不動産全体を売る:市場価格に近い金額で売りやすく、代金を持分に応じて分けられます。全員の同意が前提です。
- 他の共有者に持分を売る・贈与する:共有者の一人に権利を集約できます。贈与の場合は贈与税がかかることがあります。
- 自分の持分だけを第三者に売る:他の共有者の同意なしにできますが、買い手は共有持分を専門に扱う業者などに限られ、価格は市場価格より低くなりがちです。
- 持分を放棄する:放棄した持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。登記は原則として他の共有者との共同申請が必要で(不動産登記法60条)、持分を取得した共有者は贈与により取得したものとして扱われ、贈与税の課税対象になります(国税庁 相続税法基本通達9-12)。
- 共有物分割請求をする:協議が調わなければ裁判所に分割を求められます。現物分割・賠償分割のほか、競売になる場合もあります。
それぞれの手順・期間・費用の違いや、分筆、連絡がつかない共有者がいる場合の選択肢は、共有名義の解消方法を7つの選択肢で比較した記事で詳しく整理しています。
自分の持分だけを売る方法を選ぶ場合は、共有持分を専門に扱う買取業者に相談するのが一般的です。業者ごとの得意分野や選び方は、共有持分の買取業者を状況別に比較した記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q共有持分とはどういう意味ですか?
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する場合に、各共有者が持つ所有権の割合のことです。持分は土地や建物の特定の部分ではなく、不動産全体に割合で及ぶ権利です。持分割合は登記事項証明書で確認でき、割合がはっきりしない場合は各共有者の持分は等しいものと推定されます(民法250条)。
Q共有持分は他の共有者の同意なしに売却できますか?
共有持分は、他の共有者の同意がなくても、自分の持分だけなら単独で売却できます。ただし、不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要です。持分だけを買う個人はほとんどいないため、実際には共有持分を専門に扱う買取業者や、他の共有者が買い手になるのが一般的です。
Q共有不動産を賃貸に出すには全員の同意が必要ですか?
共有不動産の賃貸は管理行為にあたり、建物なら3年、土地なら5年を超えない賃貸借であれば、持分価格の過半数の同意で決められます(民法252条4項)。これを超える長期の賃貸借は、原則として共有者全員の同意が必要です。更新がある普通借家契約などの扱いは個別の判断になるため、専門家に確認しましょう。
Q共有者の一人が固定資産税を払わない場合はどうなりますか?
共有不動産の固定資産税は、共有者が連帯して納付する義務を負います(地方税法10条の2)。そのため、一人が払わなくても、他の共有者が全額を請求されることがあります。立て替えた分は持分に応じて請求でき、1年以内に負担を果たさない共有者からは、相当の償金を支払ってその持分を取得することもできます(民法253条2項)。
Q共有持分の割合はどこで確認できますか?
共有持分の割合は、法務局で取得できる登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確認できます。共有の場合は、所有者ごとに「持分2分の1」のように記載されています。相続登記が済んでいない場合は亡くなった方の名義のままなので、戸籍で相続人を確認し、法定相続分を把握する必要があります。
まとめ|共有持分は「権利の範囲」を知ることから始まる
共有持分とは、不動産全体に及ぶ所有権を共有者で分け合う割合のことで、自分の持分は単独で売却・放棄できる一方、全体の売却や建て替えには共有者全員の同意が必要です。2023年4月の民法改正で、過半数で決められる範囲が広がり、連絡がつかない共有者がいても裁判所の手続きで前に進める道ができました。
- 持分割合は、登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確認する
- 保存行為は単独、管理行為と軽微な変更は持分価格の過半数、変更行為と全体の売却は全員の同意
- 連絡がつかない共有者がいるときは、地方裁判所の手続きで管理・変更の決定や持分の取得ができる
- どう動くかは、共有者との「関係性」と、解決したい「時間」の2軸で整理する
共有状態の整理を考え始めたら、まずは登記事項証明書で現状を確かめ、共有者との関係性を書き出してみてください。具体的な解消の手段は共有名義の解消方法の記事で、持分を売る場合の業者選びは共有持分の買取業者の比較記事で確認できます。
編集長の著書
桐谷式 状況×軸メソッド ── 複雑な不動産を、自分の状況で売る判断基準カタログ
相続・共有・離婚・訳あり物件など、複雑な不動産をどう売るか。十二の状況と八つの判断軸のマトリクスで、自分の状況に合う売り方と業者選びの枠組みを体系化した一冊です。本記事の「関係性」と「時間」の考え方も、この判断軸に基づいています。


私自身、30代前半に離婚した際、夫と共有名義で購入したマンションの売却で大変な苦労をしました。当時は共有持分の扱い方そのものを知らず、遠回りを重ねました。
その後、買取査定の部門で共有持分の物件を数多く見てきて分かったのは、共有の悩みの多くは「自分の権利がどこまで及ぶか」を知るだけで整理が進むということです。この記事では、まずその土台となるルールをお伝えします。