一棟アパートの売却業者は、「高く売る仲介」「早く確実に手放す買取」「入居者がいるまま売る居抜き」の3つのルートで選ぶ相手が変わります。築古・空室が多い・訳あり寄りの一棟や、相続・共有・離婚で引き継いだ一棟は、権利や入居状況に強い買取・専門業者を選ぶと売却しやすくなります。
「親から相続した一棟アパート、築30年を超えて空室も増えてきたのに、どこに相談すればいいのか分からない」。京阪神で売主の方の相談を受けていると、こうした声を本当によく聞きます。
一棟アパートは、区分マンションや戸建てと違って買い手が限られ、築年数や入居状況、融資の付きやすさで売りやすさが大きく変わります。だからこそ、依頼する業者選びで結果が変わりやすい物件でもあります。
この記事では、一棟アパートの売却ルートの違いから、状況別に合う業者、査定で見られるポイント、法的な注意点までを、編集長の桐谷美咲が中立の立場で整理します。「望まず一棟のオーナーになった方」「築古・入居者付きのまま手放したい方」に向けて、判断材料をお届けします。
この記事の要点(状況別のおすすめ業者)
- 京阪神・底地や共有など権利が絡む一棟:センス・トラスト(大阪本社・買取再生・権利複雑対応・TOKYO PRO Market上場)
- 全国・築古/空室多め・訳あり寄りを早く現金化:AlbaLink(東証グロース・現状買取・売主の仲介手数料は原則無料)
- 入居者がいるまま(居抜き)で明渡しトラブルを避けたい:サンセイランディック(30年以上の権利調整・強引な明渡交渉なし・東証スタンダード)
- 一棟専門に相談したい・相続や離婚で引き継いだ一棟:IPA不動産(一棟の売買専門・投資家ネットワーク)
- 一棟RC・大型の収益物件を買取再販でスピード売却:エー・ディー・ワークス(ADワークスグループ・東証プライム)
※各社の情報は公式発表に基づく参考情報です(2026年7月時点)。総合順位ではなく、状況ごとに合う業者を示しています。
| 業者 | 特に得意な状況 | 主な売却ルート | 対応エリア | 上場区分 |
|---|---|---|---|---|
| センス・トラスト | 京阪神・底地/共有など権利が絡む一棟 | 買取再生・売買 | 京阪神+東京ほか | TOKYO PRO Market |
| AlbaLink | 全国・築古/空室・訳あり寄りを早く現金化 | 現状買取・買取再販 | 全国 | 東証グロース |
| サンセイランディック | 入居者付き(居抜き)・底地/借地が絡む一棟 | 現況買取(権利調整) | 全国 | 東証スタンダード |
| IPA不動産 | 一棟専門相談・相続/離婚で引き継いだ一棟 | 仲介・買取 | 首都圏中心 | 非上場(専門会社) |
| エー・ディー・ワークス | 一棟RC・大型収益を買取再販でスピード売却 | 買取再販(バリューアップ) | 東京・大阪ほか | 親会社が東証プライム |
目次
一棟アパートの売却が難しい理由と「仲介・買取・居抜き」の売却ルート
一棟アパートの売却ルートは、大きく「仲介」「買取」「居抜き(入居者付き買取)」の3つです。高く売りたいなら仲介、早く確実に手放したいなら買取、入居者がいるまま手離れよく売りたいなら居抜きが基本の考え方になります。
一棟アパートが区分マンションや戸建てより売りにくいのには、はっきりした理由があります。まず、価格が数千万円から数億円と大きく、購入できるのは投資家か不動産会社に限られます。さらに、築年数が古いほど金融機関の融資が付きにくくなり、買い手の候補がぐっと狭まります。空室が多い・入居者とのトラブルを抱えている・借地の上に建っている、といった事情が重なると、一般的な仲介会社では「取り扱いが難しい」と敬遠されることもあります。
この「買い手が限られる」という一棟アパート特有の事情を踏まえると、3つのルートの向き・不向きは次のように整理できます。
| ルート | 向いているケース | 売却価格の目安 | 売却スピード | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 仲介 | 立地がよく、まだ融資が付きやすい一棟を、時間をかけて高く売りたい | 市場価格に近い水準を狙える | 数か月〜半年以上 | 買い手が付くまで保有コストがかかる。売れ残るリスクもある |
| 買取 | 築古・空室が多い・訳あり寄りの一棟を、早く確実に現金化したい | 市場価格より低くなりやすい | 最短で数週間〜1か月程度 | 価格は下がるが、契約不適合責任を免除できる場合が多く、手間が少ない |
| 居抜き(入居者付き買取) | 入居者がいるまま、明渡しの交渉をせずに手放したい | 買取に準じる水準 | 買取に準じる | 入居者との関係・賃貸借契約の内容がそのまま引き継がれる |
ここで大切なのは、「どのルートが正解か」は物件の状態と売主の希望で変わる、ということです。高く売れる見込みがあるのに焦って買取を選べば損をしますし、逆に売れにくい一棟を仲介に出し続ければ、保有コストがかさむばかりで時間だけが過ぎていきます。まずは自分の一棟がどのルートに向いているかを見極めることが、業者選びの出発点になります。
一棟アパートの査定で見られるポイント(利回り・築年数・法定耐用年数と融資)
一棟アパートの査定は、収益物件としての「稼ぐ力」と、土地・建物としての「資産価値」の両面から見られます。特に、利回り・築年数と構造・法定耐用年数の残り・融資の付きやすさの4点が、価格を大きく左右します。
収益物件の査定手法そのもの(収益還元法・取引事例比較法・原価法の3方式)については、親記事の収益物件の売却業者の記事でくわしく解説しています。ここでは、一棟アパートに特有の査定ポイントに絞ってお伝えします。
利回り(表面と実質の差)
利回りは、家賃収入が物件価格に対してどれくらいかを示す指標です。広告に出る「表面利回り」は満室を前提にした数字で、空室や管理費・修繕費・固定資産税を差し引いた「実質利回り」とは差が出ます。査定では、現在の入居状況や賃料の下落余地を織り込んだ実質的な収益力が見られます。
築年数と構造(木造・軽量鉄骨)
一棟アパートの多くは木造か軽量鉄骨造です。構造によって建物の評価も、後述する融資期間も変わります。築年数が古いほど賃料は下がりやすく、大規模修繕(外壁・屋根・給排水)の時期が近いと、その費用を見込んで査定額が調整されます。
法定耐用年数の残りと融資の付きやすさ
木造の法定耐用年数は22年、軽量鉄骨は厚みにより19年または27年が目安です。多くの金融機関は「耐用年数の残り」を融資期間の上限の一つにするため、耐用年数を超えた築古アパートは買い手が長期ローンを組みにくく、結果として売りにくくなります。ここが一棟アパート売却の最大のハードルです。
土地値(積算)での評価
建物の価値が下がりきった築古アパートでも、土地そのものに価値があれば「土地値売却」が選択肢になります。この場合、更地にした場合の土地価格から解体費を差し引いた水準が目安です。立地のよい一棟は、建物ではなく土地で評価されることを知っておくと、査定額の説明を受けたときに納得しやすくなります。
POINT
築古の一棟アパートは、「建物で評価されるのか、土地で評価されるのか」で査定額の考え方がまったく変わります。査定を受けるときは、その業者が収益(利回り)・積算(土地値)のどちらを重視して価格を出したのかを確認すると、提示額の妥当性を判断しやすくなります。
一棟アパートの売却業者を選ぶ7つの判断軸
一棟アパートの売却業者は、次の7つの判断軸で見ると比較しやすくなります。査定力・売却ルートの幅・築古/空室への対応・入居者付き対応・権利の複雑さへの対応・エリア・信用情報の7点です。
一棟アパートの査定力
利回り・築年数・構造・法定耐用年数の残り・土地値を総合して価格を出せるかどうか。収益と積算の両面から根拠のある査定ができる業者ほど、提示額の説明が明快です。
仲介・買取・居抜きの売却ルートの幅
高く売る仲介、早く手放す買取、入居者がいるまま売る居抜きのうち、どれに対応できるか。両方のルートを扱える業者なら、状況に応じて売り方を選べます。
築古・空室・訳あり寄りへの現状買取
修繕やリフォームをせず、現状のまま買い取ってくれるか。空室が多い・雨漏りがある・境界が不明確といった一棟でも、そのまま引き受けられる業者は手離れがよく、スピードも出ます。
入居者付き(オーナーチェンジ)の買取実務
入居者がいる状態のまま、賃貸借契約や敷金を適切に引き継いで買い取れるか。強引な明渡しをしない方針かどうかも、後々のトラブルを避けるうえで重要です。
権利関係が複雑な一棟への対応力
底地・借地の上に建つ一棟、相続で共有名義になった一棟など、権利が絡む物件をまとめて調整できるか。権利調整には専門的な交渉力と士業との連携が必要です。
対応エリア(全国・首都圏・京阪神・地方)
あなたの一棟がある地域に対応しているか。地方の一棟は買い手が限られるため、そのエリアで買取実績のある業者かどうかが売りやすさを左右します。
上場・信用情報
上場企業やその子会社であれば、適時開示などで経営情報を確認しやすく、取引の安心材料になります。非上場でも、専門実績や許認可の情報が公開されているかを確認しましょう。
状況別おすすめ:あなたの一棟アパートに合う業者
一棟アパートは「どんな状況で手放したいか」で最適な業者が変わります。ここでは、代表的な5つの状況ごとに、当サイトの編集判断でおすすめできる業者を紹介します。総合順位ではなく、状況別のマッチングです。
京阪神の一棟/底地・共有など権利が絡む一棟を手放したい
おすすめ:センス・トラスト
大阪・北区のグラングリーン大阪に本社を置き、京阪神と東京を含む拠点で不動産の買取再生と収益不動産事業を手がける会社です。底地・借地権・共有持分など、権利関係が複雑な物件も取扱対象としており、京阪神で権利が絡む一棟を手放したいときに相談しやすい相手です。TOKYO PRO Marketに上場しており(証券コード490A・公式発表による)、経営情報を確認できる点も安心材料です。
ここは他社が優る場合
共有持分だけの小規模な持分売却や、首都圏の物件については、全国対応の専門業者のほうが標準的に処理できるケースもあります。京阪神という地域性と、権利が複雑な一棟という条件が重なるほど、この会社の強みが生きます。
全国どこでも・築古/空室多め・訳あり寄りを早く現金化したい
おすすめ:AlbaLink
空き家・訳あり物件・一棟収益などの現状買取と買取再販を全国で手がける会社です。2025年12月に東証グロース市場へ上場しており(証券コード5537・公式発表による)、リフォームせず現状のまま買い取る点、売主からの仲介手数料が原則無料である点が特徴です。築古・空室・訳あり寄りの一棟を早く現金化したいときの選択肢になります。
ここは他社が優る場合
買取は市場価格より価格が下がりやすいのが一般的です。立地がよく融資も付きやすい一棟を「できるだけ高く」売りたい場合は、仲介ルートや、時間をかけた売却のほうが有利になることがあります。
入居者がいるまま(居抜き)で明渡しトラブルを避けて売りたい
おすすめ:サンセイランディック
1976年創業で、底地・借地権・古アパート(居抜き)といった権利調整を主軸にする会社です。同社は「居抜き」を、入居者がいる状態の築古収益物件と位置づけ、入居者がいるままの現況で買い取る方針を公式に掲げています。30年以上の権利調整の経験をもとに、買取後も入居者への強引な明渡交渉は行わないとしており(公式発表による)、東証スタンダードに上場しています(証券コード3277)。入居者との関係を壊さずに手放したい一棟に向いています。
ここは他社が優る場合
入居者がいない更地に近い一棟や、純粋に収益還元だけで高値を狙える一棟では、収益不動産の買取再販に強い会社のほうが価格面で有利になることもあります。強みが生きるのは、権利や入居状況の調整が必要なケースです。
一棟専門に相談したい・相続や離婚で引き継いだ一棟を整理したい
おすすめ:IPA不動産
アパートや一棟マンションなど収益物件の売買を専門とする会社です。一棟収益不動産の売却実績は390棟以上、投資家1万名・買取業者3千社以上のネットワークを持つとしており(いずれも公式発表による)、買い手を見つけるマッチング力を強みにしています。仲介と買取の両方に対応し、相続・離婚の財産分与に絡む一棟の相談にも応じています。
ここは他社が優る場合
対応エリアは首都圏が中心のため、京阪神や地方の一棟は、その地域に拠点を持つ業者のほうが動きやすい場合があります。実績数などの数値は公式発表に基づく参考値として捉え、査定時に自分の物件での対応可否を確認しましょう。
一棟RC・大型の収益物件を買取再販でスピード売却したい
おすすめ:エー・ディー・ワークス
東証プライム上場のADワークスグループ(証券コード2982)の中核事業会社で、中古の収益不動産を一棟丸ごと仕入れ、リノベーションやテナント誘致で価値を高めて再販するビジネスを手がけます(公式発表による)。取り扱う物件規模は比較的大きく、東京に加え大阪にも拠点があります。一棟RCや大型の収益物件を、資金力のある買主にスピーディに売りたいときの選択肢です。
ここは他社が優る場合
取り扱いの中心は規模の大きい収益物件のため、小ぶりな木造アパートや戸建て寄りの一棟は、現状買取や権利調整に強い会社のほうが適していることがあります。物件の規模に合わせて相談先を選ぶとよいでしょう。
相続・共有・離婚で「引き継いでしまった」一棟を整理したい
おすすめ:センス・トラスト(+状況によりAlbaLink)
相続や共有、離婚の財産分与で引き継いだ一棟は、権利関係の整理から始める必要があります。権利が複雑な一棟の買取再生に対応できるセンス・トラストを軸に、全国・築古・訳あり寄りで早く現金化したい場合はAlbaLinkも候補になります。まずは複数社に査定を依頼し、権利の状態を整理してから売り方を決めるのが安全です。
補足
共有名義の一棟は、共有者全員の同意がないと全体を売却できません。この点は後半の「相続・共有の一棟を手放すときの注意点」でくわしく解説します。
掲載業者の評価軸別ファクトシート
ここまで紹介した中心5社を、7つの判断軸で横並びに整理します。各社の強みと守備範囲がひと目でわかるよう、公式発表に基づく情報でまとめました(2026年7月時点)。
| 評価軸 | センス・トラスト | AlbaLink | サンセイランディック | IPA不動産 | エー・ディー・ワークス |
|---|---|---|---|---|---|
| 主な売却ルート | 買取再生・売買 | 現状買取・買取再販 | 現況買取(権利調整) | 仲介・買取 | 買取再販 |
| 築古・空室への対応 | 買取再生で対応 | 現状のまま買取 | 収益性が低い居抜きも対応 | 築古の一棟も取扱 | バリューアップ前提で対応 |
| 入居者付き(居抜き)対応 | 対応 | 1棟収益として対応 | 入居者がいるまま現況買取 | オーナーチェンジ対応 | テナント付きで取得 |
| 権利複雑(底地・共有)対応 | 底地・借地・共有持分に対応 | 共有持分・訳あり全般 | 底地・借地の権利調整が主軸 | 再建築不可等の相談も | 法的精査を重視 |
| 主な対応エリア | 京阪神+東京ほか | 全国 | 全国(8拠点) | 首都圏中心 | 東京・大阪ほか |
| 上場・信用情報 | TOKYO PRO Market(490A) | 東証グロース(5537) | 東証スタンダード(3277) | 非上場(専門会社) | 親会社が東証プライム(2982) |
| 特徴のひとこと | 京阪神×権利複雑に強い | 全国・現状買取・手数料無料 | 強引な明渡なしの権利調整 | 一棟専門・投資家ネットワーク | 大型収益の買取再販 |
※上表は各社の公式サイト・適時開示等の公表情報に基づく参考情報です。実績数値や対応可否は変動するため、実際の依頼前に各社へ直接ご確認ください。
桐谷式 一棟アパートの売却業者を選ぶ5つの法的チェックポイント
一棟アパートの売却は、入居者・賃貸借契約・権利関係が絡むため、区分マンションより法的な確認事項が多くなります。ここでは、当サイトが独自に収集・整理している不動産の法的事案データベースをもとに、業者選びで確認したい5つの法的チェックポイントを、一次情報とあわせて解説します。
入居者付き(オーナーチェンジ)売却での「賃貸人の地位」と敷金・原状回復
確認すること
入居者がいるまま一棟を売ると、賃貸人としての立場(賃貸人たる地位)が買主に移り、敷金の返還義務や原状回復のルールもそのまま引き継がれます。敷金の残額、原状回復の特約、滞納状況を整理し、買主に正確に引き継げる業者かを確認しましょう。
根拠・一次情報
退去時の原状回復・敷金返還は、消費者トラブルとして相談件数が多い分野です。国民生活センターの相談統計でも、賃貸住宅の敷金・原状回復は上位の相談テーマとされています(統計値は集計時点で変動します)。条文と統計はe-Gov法令検索 民法、国民生活センターで確認できます。
既存の賃貸借条件(更新料など)の承継と有効性
確認すること
買主は、いまの入居者との賃貸借条件(賃料・更新料・特約)をそのまま引き継ぎます。更新料などの条項が有効かどうかで将来の収益が変わるため、契約書の内容を整理して開示できるかが重要です。
根拠・一次情報
更新料条項について、最高裁判所第二小法廷 平成23年7月15日判決(平成22年(オ)第863号)は、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、高額に過ぎるなどの事情がなければ有効と判断しました。判決は裁判所 判例検索で確認できます。
サブリース(一括借上げ)付きの一棟を売るときの制約
確認すること
サブリース(一括借上げ)が付いた一棟は、家賃保証があるように見えても、将来の賃料が保証され続けるとは限りません。借地借家法32条による賃料の減額請求は、サブリース契約にも及ぶとされています。契約の解約条件やこれまでの賃料改定の履歴を確認しましょう。
根拠・一次情報
最高裁判所第二小法廷 平成16年11月8日判決(判例時報1883号52頁・三和リール事件)は、借地借家法32条1項が強行法規でサブリースにも適用されると判示しました。サブリースは賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律で重要事項説明などが義務づけられています。条文はe-Gov法令検索 借地借家法で確認できます。
過去に入居者の死亡などがあった場合の告知(心理的瑕疵)
確認すること
一棟アパートの一室で過去に人の死があった場合、買主への告知が問題になることがあります。国のガイドラインには一定の目安がありますが、買主から問われたときなどは告知が必要とされます。事実を整理し、適切に説明できる業者を選びましょう。過去には、入居前の自殺を告げなかった貸主に告知義務を認めた裁判例もあります。
根拠・一次情報
国土交通省は2021年10月8日に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、告知の範囲・期間の一般的な考え方を示しました。原文は国土交通省の公表資料で確認できます。
囲い込み・両手仲介と、流動性の低い一棟の売り方
確認すること
一棟アパートは買い手が限られるぶん、仲介では「囲い込み」(他社に物件を紹介せず自社だけで買主を探す行為)が起きやすい面があります。レインズへの登録状況を開示してくれるか、行政処分の履歴がないかを確認しましょう。
根拠・一次情報
2025年1月施行の宅地建物取引業法施行規則の改正で、囲い込みは行政処分の対象として明確化されました。業者の処分歴は国土交通省ネガティブ情報等検索サイト、条文はe-Gov法令検索 宅地建物取引業法で確認できます。
なお、個別の契約や権利の判断が必要な場面では、弁護士や司法書士など専門家への相談をおすすめします。ここで紹介した内容は、業界全体に共通する一般的な注意点として捉えてください。
入居者付き・相続・遠隔地の一棟アパートを手放すときの注意点
相続・共有・遠隔地の一棟アパートを手放すときは、売る前に「権利の状態」を整理しておくことが欠かせません。共有名義は全員の同意、借地上の一棟は地主の承諾、遠隔地は現地対応できる業者選びが、それぞれの鍵になります。
まず、相続した一棟アパートが共有名義になっている場合です。共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ全体を売却できません。誰か一人でも反対すると、話が前に進まなくなります。相続で兄弟姉妹の共有になっている一棟は、売却の方針を決める前に、共有者間で「売るのか・持ち続けるのか」を早めにすり合わせておくことが大切です。話がまとまらない場合には、共有物分割という手続きが検討されることもあります。
次に、借地の上に建っている一棟アパートです。借地権付きの一棟を第三者に売るには、原則として地主の承諾が必要です。地主が承諾しない場合でも、裁判所に申し立てて「承諾に代わる許可」を得られる仕組みがあります(借地非訟)。逆に、借地契約が終了する場面では、借地人から地主へ建物を時価で買い取るよう求める権利(建物買取請求権)が問題になることもあります。こうした権利調整には専門的な知識が必要なため、底地・借地に強い業者や士業と連携できる会社を選ぶと安心です。
POINT
遠隔地の一棟アパートは、現地の調査・入居者対応・引き渡しまでを一貫して任せられる業者かを確認しましょう。管理会社との連携や、現地に足を運べる体制があるかどうかで、売却の手間とスピードが大きく変わります。
相続登記についても触れておきます。2024年4月から相続登記が義務化され、相続で取得した不動産は、取得を知った日から3年以内の登記が求められるようになりました。一棟アパートを相続したまま名義変更をしていないと、売却の前提が整いません。売却を考えるなら、まず登記の状態を確認しておきましょう。制度の概要は政府広報オンラインで確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q一棟アパートは仲介と買取のどちらで売るべきですか?
一棟アパートは、高く売りたいなら仲介、早く確実に手放したいなら買取が基本です。立地がよく融資が付きやすい一棟は仲介で市場価格に近い水準を狙え、築古・空室が多い・訳あり寄りの一棟は買取のほうがスムーズに現金化できます。判断に迷うときは、価格と時間のどちらを優先するかを先に決めるとよいでしょう。
Q築古で空室が多い一棟アパートでも売れますか?
築古で空室が多い一棟アパートでも、現状買取に対応する業者を選べば売却は可能です。AlbaLinkのように現状のまま買い取る会社や、サンセイランディックのように入居者がいるまま権利調整して買い取る会社があります。建物の価値が下がりきっていても、立地がよければ土地値での売却が選択肢になります。
Q入居者がいるまま(オーナーチェンジ)一棟アパートを売れますか?
入居者がいるまま一棟アパートを売ることは可能です。この場合、賃貸人としての立場や敷金の返還義務、賃貸借契約の条件がそのまま買主に引き継がれます。入居者との関係を壊さずに手放したいなら、サンセイランディックのように強引な明渡しをせず現況で買い取る会社が向いています。
Q相続した一棟アパートを売るときの注意点は何ですか?
相続した一棟アパートを売るときは、まず相続登記と共有名義の整理が必要です。2024年4月から相続登記が義務化されており、名義変更をしていないと売却の前提が整いません。共有名義の場合は共有者全員の同意がないと全体を売れないため、方針を早めにすり合わせることが大切です。
Q一棟アパートの売却で業者を選ぶポイントは何ですか?
一棟アパートの業者選びは、査定力・売却ルートの幅・築古や空室への対応・入居者付き対応・権利の複雑さへの対応・エリア・信用情報の7つの軸で比較すると分かりやすくなります。京阪神で権利が絡む一棟ならセンス・トラスト、全国で早く現金化するならAlbaLink、入居者付きならサンセイランディックなど、状況に合わせて選ぶのがおすすめです。
まとめ|一棟アパートは「状況」で最適な業者が変わる
一棟アパートの売却業者は、総合順位で決めるものではなく、あなたの一棟の状況で選ぶものです。「仲介・買取・居抜き」のどのルートが向いているかを見極め、状況に合う業者に相談することが、納得のいく売却への近道になります。
最後に、状況別のおすすめをもう一度整理します。京阪神で底地・共有など権利が絡む一棟ならセンス・トラスト、全国で築古・訳あり寄りを早く現金化するならAlbaLink、入居者がいるまま明渡しトラブルを避けたいならサンセイランディック、一棟専門に相談したい・相続や離婚で引き継いだ一棟ならIPA不動産、一棟RCや大型の収益物件を買取再販で売るならエー・ディー・ワークスが候補になります。
まずは複数社に査定を依頼し、提示額の根拠と、自分の状況に合う対応をしてくれるかを比べてみてください。収益物件全般の売り方については、収益物件の売却業者の記事もあわせてご覧いただくと、判断の幅が広がります。
編集長の著書
桐谷式 状況×軸メソッド ── 複雑な不動産を、自分の状況で売る判断基準カタログ
相続・共有・離婚・訳あり物件など、複雑な不動産をどう売るか。十二の状況と八つの判断軸のマトリクスで、自分の状況に合う売り方と業者選びの枠組みを体系化した一冊です。


買取査定の部門にいたころ、私は築古の一棟アパートを数多く見てきました。そこで痛感したのは、「同じ一棟でも、渡す業者を間違えると数百万円単位で結果が変わる」ということです。
特に、入居者がいる・相続で共有名義になっている・借地の上に建っている——こうした一棟は、一般的な仲介会社では取り扱いを断られることも珍しくありません。だからこそ、状況に合う業者を最初に選ぶことが何より大切だと考えています。